今年は雪が物凄く少ない。
その上雪質も細かい気がする。
毎年何だかんだ楽しみにしている札幌雪まつりは成功するのだろうか?
純粋に心配だ。
年越し納沙布初日の話
朝四時に起床して準備する。
窓から外を覗くが真っ暗で、なにも見えない。
Q.なぜこんなに早起きなのか?
A.別に楽しみで眠れなかった訳じゃない(ツン)
七時発帯広行き特急スーパーおおぞらに乗車するため、六時には札幌駅に到着して輪行する必要があるのだ。
半開きの目を擦りながら防寒装備を身にまとう。
玄関を開けると、街灯りの反射で赤みがかった空から雪が深々と降りつけていた。
昼間は乗用車やバス、トラックで賑わっている札幌の道路だが、早朝のこの時間はタクシーすら通らない。
時々新聞配達のカブが″ブロロロロ………″と音を響かせて走って行くだけ。
私も冬にバイクに乗る奴は頭おかしいと思っていた。
けれど早朝から毎日カブでやってくる新聞配達のおじさん見てると、そんな考えはどこかに行ってしまった。
むしろ、こんな年越しチャレンジを考え付いた頃には「スゴい」や「カッコいい」と思えてしまったから怖い。
何に対しての「カッコいい」なのか分からないけど、そう思えてしまったから不思議としか言えない。
6時札幌駅着

排ガスが混じった茶色い雪を叩いて輪行準備を始める。
やっぱり寝袋が一番大きくて邪魔。
ダウンシュラフを新調しようと考えていたが今の寝袋の4倍の価格で、結局止めてしまった。
悔やまれる。
7時5分発

去年の年末のデジャヴを感じながら列車に乗車した。
えきねっとの格安指定席だが同じ2号車に座っていた人は自分含めて5人。
もう少し乗客いてもいい気がしたが、これが過疎の力というもの。
寂しく感じた。
帯広までの記憶は睡魔によって下記消されたので割愛。
帯広駅の改札を抜けて外に出る。
大粒の雪が降っていて雪があること自体に安心した。
輪行解除。
10時半頃
年越し納沙布岬スタートっ

今日は本別町まで行ければ良い。
国道に出て真っ直ぐ東を目指すだけ。
道に迷うことなど無い。
が、迷った。
おかしい……なにかがおかしいぞ……
とりあえずわかる道を進んで行くとライダーハウスヤドカリにたどり着いた。

去年一緒に走った停滞チャリだーがいるというので、彼に挨拶。
おっ…
相変わらず元気そうだった。
情報交換の過程で「今年は上も下も右も天気が荒れる」という話になった。
どうやら彼も宗谷か納沙布か迷っているらしい。
年末なんてどこも行かないでストーブ前でぬくぬくしてる方が1億倍安全で平和な筈なのに、どうしてこの界隈は岬やら限界に挑戦したがるのかね。
盛大なブーメランである。
日没時間も迫っているので30分ほどでさいなら。
はや「じゃあ31日に納沙布で会いましょう。」
″どーしよっかな″と返ってきた。(フラグ)
本別町まではひたすら平坦。
夏に一度走っていたが、冬と夏とでは景色がまるで違う。
景色は二度楽しめるというもの。
そういうもん。
池田町を過ぎた辺りから雪が消えた。
アスファルトがむき出しの3月の東北を走っている気分。
アスファルト-タイヤを切りつけながら-♪
脳裏に浮かぶのは get wild 。
シティーハンターだ。
実際はカントを集めてるからカントリーハンターだけど。

午後3時
本別町ステラほんべつ道の駅に到着。
日没までまだ一時間半ある。
ここで私はミスをした。
しかも割りとドデカイ、命に関わるミスをした。
「行けるとこまで行きたい。」と考えてしまったのだ。
阿寒湖までは40-50km。
ペースも良かったので単純計算で7-8時までには阿寒湖市街地に到着できると思った。
実際に走ると上手くいかなかった。
最初はアスファルトが剥き出しだった道も、次第に雪が積もり始め雪も降ってきた。
交通量は15分に一台だったのが30分に一台、それ以下に変わる。
外灯など無い。
音も無く町の明かりさえも見えず。
ただ、ひたすら真っ暗な世界を走ることになったのだ。
光源はフロントライト3つと赤く点滅する反射ベストだけ。
精神的に追い込まれた状態で、体も思うように動かなくなる。
やがて、速度が15km/hから10km/h。
6km/hと落ちて行く。

どんなに力を入れても前に進まない。
積雪しているからと言っても1cm未満。
普段なら全然進める。
なんなら去年の美深の積雪の方が進まなくて辛かった。
もっと速度が出るはずなのに……
どうして…どうして……
だんだん冷静な判断が出来なくなってきた。
がむしゃらにダンシングしたり30分インターバル休憩を約15分毎に取ってみたり。
挙げ句の果てには右膝に痛みを抱えることになる。
この痛みはいつも180kmを越えたときに発生する癖のような傷み。
今日はまだ100km程しか進んでいないのに痛んできた。
「これは本当に不味い奴だ。」
足が千切れては前にも後ろにも進めなくなる。絶対に休まないとダメだ。
阿寒はあきらめて″ビバーグ″しよう。
「白藤の滝」という看板が現れ、そこから林道に入れそうだったので問答無用で進入していく。
そこから更に車が入ってきても邪魔になら無いよう少しだけ森の中に入って自転車をぶん投げた。
そして無意識に声が出た。
「ここをキャンプ地とする。」
かなりヤられていて全然面白くも無かった。
けれど、どうにか落ち着こうとしたのだろう。
横殴りの風が吹く森の中で、綿のような軽い雪が降り注ぐ。
そんな中で必死にテントを張り、就寝準備が整った。

電波など通じていない。
ゆえに圏外で安否確認も出来ない。
クソッタレ………
流石に暖かく送り出してくれた親には心配をかけたくない。
少しだけ仮眠を取ることにして、安否確認を送るために明るくなる少し前に出発しよう。
あーつかれた。
ペットボトル湯タンポを膝に巻き付けて寝袋に入り、頭の中では計画の甘さと自分への過信を反省。
天井の穴から入り込む冷たい風が、ストーブの青い炎を揺らす。
その命の炎は、まるで俺を笑っているみたいで気味が悪かった。