「あれ?知らない天井……」
寝ぼけてライダーハウスにいることを忘れていた。
外に出て顔を洗う。
今日はクソ寒い日だなあ……
mont-bellのレインパンツをはいて裾を反射板テープで止める。
天気を確認して6時半に出ることを決めた。
朝飯を食べ、バイクパッキングをする。
朝早いライダーさんは「ありがとな!昨日は楽しかったぜ!良い旅を!」
こちらこそ!楽しかったです!良い旅を!
支度が早いなあ~
自分も急いで準備をする。昨日お世話になった他のライダーさんにも「良い旅を!」とグッドポーズ。
予定通り6時半にライダーハウスをでる。
ライハから斜里市街地に出るまでにあるカーブを走り抜け駅側に出る。
すると、朝早くから地域の方が路肩の花壇を綺麗にしていた。
こうやって毎日町を綺麗にしているんだな!
「おはようございます!」
と声をかけると
「おはよう!」
と必ず帰ってくる。
いい町だ!(^^)
青看を見て国道に出る。
曇っているが知床の山が綺麗に見えて良かった。
しばらく進むと、昨日教えてもらった
「天に続く道」
の分かれ道に入る。
そこそこの坂で朝から疲れる。
頂上で写真を撮っている人たちがいて、早くどけなければならない。
とりあえず上りきり道端に倒れる。
疲れたが景色は最高で道が果てしなく続くような風景。
素晴らしいな!

写真を撮っていたおじさんと少し雑談をして。坂を下る
んんんぎもぢぃぃぃぃ!!
朝イチのダウンヒルは病み付きになる。
海岸線に出て、しばらく進むと前から来たチャリダーさんが右の道に入っていくのが見えた。
気になるので右の道に入ると、そこは鹿牧場だった。
なまら鹿おる……

チャリダーさんは朝イチで峠を越えてきたらしい。
雑談してさよなら。
最近はチャリダーさんに出会ったら積極的に情報交換するようにしている。
ほどよい長さの情報交換はお互いプラス効果だと思うからね。
出発してトンネルをいくつか抜けると
「オシンコシンの滝」
と、看板が見えてきた。

フフッ(名前が個人的にツボる)
近づくと風が強いため水しぶきがかかる。
寒すぎだわ!!
お土産屋の交通情報掲示板を見ながら、しばらく休憩。
ついでに、水も補給する。
出発して、またトンネルを抜けると海岸がぼこぼこしてきて自然の内海が形成された場所に出た。
波が無くて海が静か。
気分も良くなり、調子もあがる。
ひたすらペダルを回していると、一台の観光バスから声がした。
「頑張れよ!」
顔は見れなかったが、とっさに「ありがとうございます!」と、叫ぶ。
知床は観光客も多いのでバスが多い。運転手からしたら、とんでもなく迷惑だろう。
ごめんなさい。私の夢の為に目をつぶってください( ノ;_ _)ノ
だらだらこいで10時頃にウトロに到着する。
さて、目的地に来たがどうするか。

とりあえず道の駅のベンチで休憩。
「ん?なんか、右アキレス腱が痛い……」
関節を押す
「かなり痛い。変なこぎ方してたかな?」

これからの予定を考えながら、足に湿布を張って対処する。
そして、3つ選択肢を上げた。
その1
野営場に行き、テントを張り、お風呂に入って今日は終了。
その2
ウトロ市街地を観光してから知床五湖に行って野営場に戻り今日は終了。
その3
峠自体を越える。
その3は確実にバカな発想。足を崩壊へと導くクソみたいな選択。
うーん。
ゆっくりしてられないけど、疲れたから今日は終了するか。
自分に言い訳をして、その1を選ぶ。
野営場の看板を見つけて、道に入ろうとする。が。
「…………嘘やろ」
目の前にあったのは網走のキャンプ時並みの坂。
あー無理無理(ヾノ・∀・`)
こんなの上ったら足どころかメンタル壊れちゃう。
私の心はガラスでできているのよ。
無表情で、プランその2に移行する。
どうせ辛いなら最後がいい。
市街地を観光客を抜けて海岸線。
???
知床センターまでも、坂じゃないか!
ここまで来たのなら行ってしまおう……

坂を上ると知床五湖の青看板が見える。よしよし、ここを左だな?
道に入ると下り坂だった。
本日二回目のダウンヒル。速度も50km 出るほどの最高のくだり坂。
「ひゃっほ~」
かなり、長い下り坂で面白かった。
しかし、脳裏に浮かぶ。
それは、稚内で話したチャリダーさんの言葉。
「世の中上がり坂の後には下り坂があるんだぜ?人生みたいだよな!」
脳内変換すると、
「世の中下り坂の後には上り坂が待ち構えてるんだぜ!」
もう遅かった……
目の前には、今下ってきた坂と同じ斜度の坂がある。
「あーー()」
考えるのを止めた。
ついでに、ペダルを踏むのも止めた。
かれこれ、10kmを一時間近くかけて進んだ。
五湖が近づくと観光客の大渋滞。
「車で来ていたら自転車で来るより時間がかかるな……」
車を回避しながら到着!
天気は朝と違い晴れ!
大自然を満喫できた!

帰りに鹿バーガーとアイスを食べる。時刻は1時前。

チャリダーさんは誰一人いなかったので、たいして長居はせず五湖をあとにする。
来た道をまた、一時間かけて戻る。
辛い……辛すぎる……
しかも道幅が狭い上に大型バスが何台も通るのでカーブが怖い。
やっとの思いで自然センターに戻り、休憩する。
さて、「ウトロに戻るか!」と思った矢先軽トラから降りてきたおっちゃんが
「これから、峠上るんかい!熊に気を付けてがんばれよ!」
い・ろ・は・す をくれた。
そんな……今応援されたら……頑張りたくなっちゃうじゃない///
「バカ野郎」のスイッチが切り替わる。
時刻は14時。天気は晴れ。風は弱し。
最高のコンディションじゃねーかよ!!
気合いを入れて踏み込む。
自転車で峠を越えるのは人生で初。
辛いな……と思いながら、ゆっくりと疲れない程度に進む。
辺りは木々が生えまくり、車は少なく鹿が何びきかいる。
ビンディングの特性である引き足を使ったりして進む。ほぼ立ち漕ぎだった。
標高500mぐらいまで進むと辺りが開けて絶景が広がる。
気が緩み、ビンディングを履いていることを忘れる。
あっ足が……離れない……
その瞬間路肩に倒れる。
立ちごけってやつだ。
単純に痛い(;_;)
気を取り直して上る。
途中停車場に止まった車からお姉さんが出てきて、カメラをこちらに構えた。
ん???
撮られてる??
お姉さんは「がんばれぇ!」と応援しながらシャッターを切ってくれた。
なんだこれ笑笑
レースしてるみたい笑笑

だんだんと木々が少なくなり、羅臼岳も近づく。

そして、ようやく駐車場が見えてきた!

「疲れたアアアアアア!!!」
大体1時間少しかかっただろうか。長いようで短い峠でした!
ライダーさんや観光客に「お疲れ様!すげえな!」と誉められまくり、嬉しかった。
しばらく写真を撮ったりライダーさんと情報交換をする。
ライダー「羅臼側に熊の湯って言う無料温泉があるよ」
いい話を聞いた( ´∀`)
疲れた体を癒すのは温泉が一番!さっさと頂上を後にした。

ダウンヒルはやっぱり気持ちいい!楽しい!
自転車の法定速度がなんキロだか知らないが、とりあえず右前を進むハイエースとは並走していた。
ハンドルを取られないようにガッチリ握って下る。
いつだったか……闇に降り立った天才が言った「狂気の沙汰ほど面白い」とはこの事だろう。
さて、麓よりも少し手前に駐車場があった。
ここに熊の湯があるのか……

駐車場は満車。自転車を隅っこに停めて橋を渡る。

男湯だと思われる入口に行くと、そこには全てがオープンな湯船があった。
地元のおじいちゃんだろうか?
温泉を囲って体を洗っている。
まるで、猿だ……
怯むな!ダウンヒルで冷めた体を温めるためだ!入るぞ!
地元のおじいちゃん指導の元、入水。
…………
熱すぎじゃね……?
5秒で出る。
はや「えっ熱すぎじゃないですか?」
地元勢「そりゃあ熱いのは当たり前よ。50℃はあるもんな!ゲラゲラ’`,、(‘∀`) ‘`,、」
なんだこいつら……
熱い熱いと言いながら入水していくではないか。
地元勢「兄ちゃんも我慢して入ってみ?痛いのは最初だけじゃ!ゲラゲラ’`,、(‘∀`) ‘`,、」
たしかに……まだ温まっていない……
今度は我慢して入る。
全身が痛い。ヒリヒリ。ビリビリする。体を1ミリでも動かしたら激痛がはしるのだ。
頑張って60秒ほどで出る。
結論は「いい湯すぎて俺には合わない!」
歳をとったらまた来よう。
温泉を後にした。
羅臼町に入ると、またウトロとは違う雰囲気が味わえた。静かな町だ。
峠を越えるなんて考えていなかった。宿を考えていない。
キャンプ場は過ぎちゃったから野宿かな……?
と、考えながら走っていると「ライダーハウスお気軽屋」の文字が目にはいる。
ライダーハウスいいな……
即決。
夜ご飯もつけてくれるらしく、いい場所やん!

秋刀魚定食を味わう。
札幌から釣りに来ていた夫婦の方と、同室のライダーさんでご飯を食べた。
雑談タイムはこれで終わりじゃない。
夜は他の旅人と盛り上がり、一時まで騒いだ!
まったく……ライダーハウスは最高だぜ!
明日は開陽台に行こうかな。はたして地球は丸いのか?